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ローランド アレン・著 小林玲子・訳『紙の上で考えることの歴史』

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Notebookを日本語で言い表すと「ノート」にしかならない。日本人なら子どものころに使った学習用のノートを真っ先に思い出すはずだ。しかしこの言葉は、日記、スケッチブック、備忘録、元帳、航海日誌なども表す言葉だ。ただしそもそも何も書かれていない白紙のもの。この白紙の本がいかに私たちの考え方を変え、世界を変える手助けをしたかを語る本となっている。ノートブック、モレスキン、クロス装、コモン・プレイス・ブック(備忘録)、ノートには関連するさまざまな呼び名がある。これだけ身近な白紙の本とはいったいなんだろうか。読むための書籍にまつわる話は数多く刊行されているが、白紙のノートに関する本はこれまでなかった。
 ノートは800年もの間、ひとつの世界を形作ってきたのだ。中世イタリアでは、白紙の帳簿が国際貿易を一変させ、またスケッチブックがルネサンスの知的芸術的進歩を可能にした。海では、日誌の発明がマゼランやその仲間の発見者たちの旅の視野を広げた。レオナルド・ダ・ヴィンチからパブロ・ピカソに至る芸術家たち、アイザック・ニュートンからアルバート・アインシュタインに至る思索家たち、チョーサーからヘンリー・ジェイムズに至る作家たち。彼らはみな、ノートに鍛えられて作品を生み出した。こうした事実をもとにノートがいかにして私たちの最も耐久性のある思考ツールとなったかを明らかにする。
 中世までは、公式にはラテン語を使い、神の言葉を高価な羊皮紙に書き写すことが主流の手稿本の時代だった。それは活字が発明される前のことだ。それが紙が広く使用されるようになって帳簿の時代となる。それまでの蠟を使用した木簡とは異なり書き直すことができなくなることで紙の帳面が使われるようになった。また綴じることで改竄もしにくくなっていき、簿記の重要性が増していき、ベネチアなどでの商業の発展につながっていく。まさに現代のネット上で起きているデータの保存の中世版だ。絵画の話では、紙の上で試し書きをすることで絵描きがデッサンを重視できるようになり、絵の具の使い方も飛躍的に発展した。家計簿を利用することで、個人的な出費や出来事を書き留める手段として発展していく。ラテン語ではなく自分たちの言語でも書けた。詩、レシピ、占星術などを書き留める習慣ができていく。船舶と航海、積み荷、そして出世の記録が生まれていく。手書きの地図が重要となり、航海に関しては数学も必要だった。そして紙の上で計算することができるようになる。チョーサーの『カンタベリー物語』。これはボッカチオの物語を再話したもの。活字のない時代、チョーサーは外交官としてイタリアに派遣され、そこで見聞きしたことをノートに書きつけることができた。
 これまで見落とされてきた「ノート」の役割と魅力について、さまざまな角度から検証していく。私たちは書くという行為を手放してはいけない。それはデジタルの時代だからこそ気づかなければならないのだ。

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