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日本語、韓国語、中国語、台湾語――我々が言語と呼ぶものは誰のものでもない。しかし、「あいだ」にいる人々はときに、言語を奪われ、ないがしろにされてきた。それは昔の話だろう、海外の話だろう、我が国は…と即座に思った人はきっと閉鎖的なマジョリティの側にいる。あいだにいる人は、その土地の言葉を話すと、現地のひとにきまってこう言われる。「お上手ですね」。そういえばぼくも、海外から来た外国人に対して同じように言ったことがある。心の中で、「”私たちの”言葉を話してくれてありがとう」とも。そのときのぼくは〈日本語は私たちの言葉であって、本来あなたの言葉ではない〉という前提に立ってしまっていたのだった。
本書は、台湾に生まれ日本で育った小説家・温又柔さんと韓国にルーツを持つ小説家・深沢潮さん、そして韓国語研究者の辻野裕紀さんによる対談・鼎談をもとにしている。あいだで生きてきた彼らの「あいだ」の話を読んでいると、自らの過去を省みつつも、それ以上にこのせかいが豊かなものに見えてくる。辻野氏はあとがきで、次のように締めている。「〈わたし〉の複数性に敏感になること――これこそが他者の生への想像力を賦活させ、よりよい社会を作っていくためのよすがとなるのではないか」。
言語文化論としてだけでなく創作論や言語学習の愉しみについても話題が及ぶ、豊穣な「あいだ」論!
【目次】
Ⅰ 複言語に住むということ 温又柔+辻野裕紀
言語は個に属する/ことばは自分の内面を豊かにするもの
Ⅱ 東アジアの中の私たち 深沢潮+温又柔
東アジアの中の私たち/私はどの国の代表でもない/在日として、女性として、書くということ/複数の名前、複数の私
Ⅲ 物語の〈終わり/始まり〉 深沢潮+温又柔+辻野裕紀
「分からなさ」のために/ひとりの人間は書けるが、人間そのものは書けない/文学は役に立つ
あとがき 辻野裕紀
価格:1210円(税込)
仕様:B6小サイズ、72ページ、リソグラフ印刷
装丁:佐々木未来
発行:生活綴方出版部
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