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小島日和『水際』
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小島日和詩集
第26回中原中也賞受賞
「薬指をおかえしに上がりました、女は下げていた巾着袋を差し出した。」
【作品紹介】
エスカレーター
底のない穴のなかを
エスカレーターが動いている
上っているのか 下りているのか
とにかく、逆向きに乗ってしまい
遠い国のデパートのように
段差がなく平らになっているので
ベルトコンベアで運ばれているようでもあり
ほうれん草の束が滑り下りてきて
そちらが上かと知るのだが
反対側からも転がってくる鶏肉を
腕に抱えこもうとするなら降りねばならない
どこかからやってきた子どもが
扉の前に座りこみ
一本ずつ指をしゃぶっている
かれは得意になって
私よりずっと
とおくへはなす
ポケットから取り出した 抜け殻も
壊れて落ちていくままにはしない
手の平に残ったかけらまで
すっかり なめ終えてしまい
よくまわる舌から
ほつれた糸が引きだされていく
しわが寄り ひだが生まれ
とおくは ちかくへ絞られていく
踊り場から坪庭を見下ろす
排出される空気に巻かれながら洗濯物が落下していく
忘れ物をたしかめているとき、
わたしの背後では断層が広がっている
いつまでも搬出口が見つからない
喉の奥にはりついて離れない
灰汁をかき消すように
いきおいよく注いだ牛乳で飲みくだす
著者 小島日和
発行所 七月堂
発行日 2020年7月1日
四六判 89ページ
(版元オンラインサイトより引用)
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