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〈私たちは常にボーダーランドに暮らしている〉。アートブックの出版レーベル「TISSUE PAPERS」から、テキスト中心のリトルプレスが登場。
この2020年4月の間に制作・発行された完全新作。コロナ禍のなかで表現にたずさわる、さまざまな人の「ごく短期間の記録」が掲載されている。
これほどこの「2020年4月」を強く感じさせる本に、ぼくはまだ出会っていない。
「穴の開いた春」に呆然と、あるいは毅然と立ち、まだしばらく、これからも生きていくことになるであろう人に。デザイン・米山菜津子。(内沼)
◎執筆者・掲載順
butaji(シンガーソングライター):文章と音源
ドミニク・チェン(情報学研究者):写真日記
毛利悠子(美術家):文章
高橋恭司(写真家):文章と夢日記
サヌキナオヤ(イラストレーター):漫画
清水チナツ(キュレーター):写真日記
熊谷直子(写真家):文章と写真
米山菜津子(アートディレクター):文章と写真
◎編者より
移動し、人に会い、別れ、働き、食べて飲んで暮らす。これまで当然のように続いてきた営みが制限され、いつ終わるともしれない疫病の恐怖、生活上の不安など、数十億の人々が共通の体験をすることになった、2020年の春。日々メディアを大きな数字が流れ、世界中で「みんなで」「一つになって」「打ち勝とう」という言葉が叫ばれるのを目にする、世界史的な時間を私たちは生きています。
しかしながら、人がこの困難に対峙することを可能にしてくれるのは、 本質的にはあくまで一人ひとりの生への信頼であり、世の大きなムードには決して回収され得ないはずの超個人的な思考や感情への信頼であるはず。そう考え、急遽「今、何を考えているんだろう」と思ったみなさんの個人的な思いをご寄稿いただき、一冊のリトルプレスにしました。
勢い任せでつくった本で、まだ「ブックス」と呼べるほどのシリーズにするかどうかもわからないのですが、これを「ボーダーランド・ブックス」と名づけることにしました。このコロナ禍によって残念ながら様々な社会の断層が可視化されているような(もちろん、その逆に素晴らしい相互扶助や相互信頼の形も私たちは目にしています)昨今ですが、その断層は今になって現れたものではなく、私たちが見えなかった / 見て見ぬふりをしていただけで、もともと私たちの社会に存在していたものであること。私たちは常にボーダーランドに暮らしているのだということを考える手引きとなる本、というくらいの意味です。
この先の社会のこと、コロナ以降の世界のこと、考えることはたくさんありますが、ここではみなさんが今この時間をともにしている感情や揺らぎ、不安、希望、怒りなどをもとに、ごく短期間の記録( 日記、随筆、フィクション、絵、写真、 音楽など形式は問いませんと、みなさんには伝えました )を寄せていただきました。
いずれ時間の流れとともに薄れていくそうした思考をなるべくリアルタイムに近い形で残し、この夜の時代と、ならびにこの国がすべての小さなものを埋め立てながら目指してきた2020年という年に突然あいた奇妙で深い虚無の穴の淵に立って、もう一度私たちの生きる時代を眺めてみるための処方のようなものに、この本がなっていれば幸いです。
安東嵩史(本書編集発行人)
◎ページ数
本文114ページ
レビュー
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