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柊有花 詩画集
このたび柊有花さんによる、「絵」と「言葉」の本を刊行いたします
明け渡してしまった
自分の心を取り戻すには
目的のない旅が必要だ
【作品紹介】
「呼吸」
人が去ったあとの海は
清らかに
打ち上げられた星は
浜一面にまたたく
しなやかに編まれた
太陽の光は
海の底を明るく
照らしている
水面はやわらかに逆立ち
一枚の葉を
浜へ運んでゆく
一艘の白い舟が
岸を目指し進み
かもめは追いかけ飛んでゆく
白い半月のかなた
昼の
まぼろしのように浮かび
ひとり
夜を待っているのか
濃い青と
ブルーグリーンのあいだ
海は
海はたえまなく
呼吸している
【著者からのメッセージ】
絵と言葉の本を作りたいとずっと思っていました。わたしにとって絵は仕事でもあり、ライフワークでもあります。けれど言葉もまた欠かすことのできない大切なものです。絵と言葉は分かちがたくつねに影響しあっていて、それを自分らしい形で統合していきたいといつも考えてきました。けれど絵本や詩集など、自分の思うものを収めるにはすこし形が違うように思えて、自分が作りたいものはなんなのかさえわかりませんでした。作りたいと思うものを形にできないことは、わたしにとってとてもつらいことです。そのことが恥ずかしく、自分に対して怒りと悲しみを感じていました。
コロナ禍の内省の時間を経て、わたしがものを作ることへの意識はずいぶん変わったように思います。そのなかで2020年に作った画文集『花と言葉』に背中を押され、もっと遠くへ旅に出たいと思うようになっています。けれど同時に不安があります。家にいることに慣れてしまった自分はそんな旅へ出られるのかしら、と思うのです。
今回刊行する本が、そんな自分のなかの葛藤を打破するようなものになっているかはわかりません。けれど、自分の現在地をあらわしたものであることはまちがいないと確信しています。旅の途上の、悩み、怒り、悲しみ、進みたいと願う、未完成で等身大の自分です。
旅は楽しく面倒なもの。わたしたちにはかけがえのない日常があり、コントロールできない環境があり、いつでも旅に出られるわけではありません。けれど旅と日常のあわいに立って自分の心を眺める時間、それもまたひとつの旅なのだと思います。わたしが誰かの本を通じて自分の心をたしかめているように、この本も誰かにとってのちいさな旅への扉となることがあったら。そんな願いをこめながら、力を貸してくださるみなさまとこの本を届けられたらと思っています。
著者・装画・挿絵 柊有花
発行所 七月堂
発行日 2024年10月5日
138×148mm 88ページ
(版元サイトより転載)
レビュー
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